gdgd妖精sとコミケ その6
さぁ、今回は最終回!
やっと去年1年間の総括です。
gdgd妖精sは僕が放送作家になってから初めて責任のある立場で
好き勝手に作らせていただいた作品でした。
「演出」の仕事が大きかったので、厳密には放送作家としての仕事には
入らないかもしれませんが。
前回までで書いてきた通り、僕が現時点で考えられることは
全てこの作品にぶつけましたし、関わってくださった全ての人が
素晴らしい仕事をしてくれましたし、たくさんの幸運なミラクルも
ありました。
視聴者の皆さんのリアクションひとつひとつに一喜一憂させて
いただき、こんなにクリエイター冥利に尽きることは無いなぁ、と
しみじみ感じさせていただきました。
そしてそれと同時に、こんなに濃い経験をさせていただいたことで
もうお金のためだけにユーザーを後回しにしてクライアントを
満足させる仕事をするのが心底嫌になってしまいました。
完全に芸人時代の感覚に戻ってしまいましたね(笑)
クリエイターが命を削って挑戦的なものを作り、
それを一定のユーザーが受け入れて満足してくれた…
誰が初期投資をしたかは置いておいたとして、
極めて原始的なビジネススタイルですがこんなに全員が
ハッピーな状態はありません。
まさにコミケのスタイルと一緒ですよね。
経済が発展するにつれて(なんて書くと大袈裟ですが)
クリエイターとユーザーの間に多くのビジネス団体が
関与するようになりました。
しかし、この間に入る人たちはクリエイター、ユーザーと比べて
もっとも商品・コンテンツに対する愛情がありません。
唯一「商品・作品を良いものにする」ということよりも
優先することがある人たちなんです。
もちろんそれは「お金を稼ぐ」ということです。
その人たちはビジネスとして資金を投資し制作の主導権を握り、
効率よく利益を回収できるようにと、ときとして商品・コンテンツの
クオリティを後回しにしてビジネス的な戦略を行います。
たとえその戦略が商品・コンテンツのクオリティを下げる結果に
なったり、作り手・ユーザーの満足を損なう結果になろうともです。
なんだか当たり前のことにになってしまっていますが、
冷静に考えてこれ、クリエイターとユーザーの間に一番商品・
コンテンツに愛情のない人が入って、その人が一番主導権を
握ってるんですよ?
こんなに不健全な状態なくないですか?
本来、商品・コンテンツのクオリティがイコール、ユーザーの
満足であり、それがそのままビジネスに結び付くはずです。
金儲けのために作ったものや、出来ることから逆算して
作ったものなど、新しさや挑戦がなくてユーザーを心から
満足させられません。
これだけネットで情報が共有できるようになった昨今、
内容がつまらないものにいくら外側から話題性をくっつけた
ところで売れませんし、ビジネスのためのイメージコントロール
なんてもうほとんど通用しないでしょう。
作り手がひとりよがりなマスターベーションをしてユーザーを
置いてきぼりにするのはもちろんいけないことですが、
一番作品への愛情の薄い人が「時間と予算」以外の観点から
作品内容を左右することは作り手にとってもユーザーに
とっても損失ですし、商品・コンテンツに一番愛情の薄い人が
ビジネス優先で考えたプロモーションや売れるための保険なんて
作品に取っては「ピント外れ」以外の何物でもないんです。
そして当然ユーザーだってお金が無尽蔵にあるわけではないので、
無理矢理お金儲けをゴリ押ししようとすれば買い疲れたユーザーが
リタイアしていき市場そのものが疲弊してしいます。
作品に愛着が薄い人たちが作品外に商品・コンテンツの内容を
損ねるようなビジネス的保険をかけなくても、前回書いた通り
きちんと作品内に幅広いユーザーに支持されるための保険は
かけれるんです!
ユーザーにバレバレの金儲けプロモーションなんかしなくても、
作品内に保険をかけて良い商品・コンテンツを作れば
ユーザーは満足してビジネス的な成功に結び付くはずです!
少なくとも今後のコンテンツビジネス・エンターテイメント業界は
作品に愛情を持ってユーザーの満足を考えられる人たちしか
必要とされなくなってくるんじゃないかな?
ビジネス主導の殿様商売スタイルは不況&ネット社会によって
衰退していくんじゃないかな?
こんなちっぽけな15分CGアニメと趣味で作ったくだらない
料理同人本ですが、『gdgd妖精s』と『痛飯』という2つの
作品を通じて直接ユーザーの方々と触れ合ったことで、
そんなことを強く感じました。
実は去年もうひとつ、僕の中で大きな出来事がありました。
ちょっと説明が長くなってしまうのですがお付き合いください。
大きな出来事というのは去年の5月いっぱいで6年間続けてきた
共同生活を卒業したことです。
男だらけのシェア生活。
はじめはまだ放送作家になったばかり、30歳を過ぎてまだまだ
貪欲に新たなる分野での創作活動を続けていきたいと願い、
クリエイターばかりを集めた共同生活を始めました。
最初のメンバーは吉本興業の若手芸人、
元ヤンで霊能力のあるイラストレーター、
エロ漫画家を目指す童貞Aボーイ、
そして僕の4人でした。
畑の違うクリエイターがお互いに刺激を与え合い、ときに協力して
応援し合う『クリエイタートキワ荘』というのがその家の
コンセプトでした。
とても有意義で貴重な時間を過ごさせてもらったのですが、
徐々に変化が起こり始めました。
1年にひとりくらいの割合でそれぞれの事情により同居人が
入れ替わっていき僕以外の人たちが一巡した頃から、
一応クリエイターの男性限定で募集して住んでいたのですが
住人に30代で会社に所属する人の割合が多くなっていました。
どうも感覚が合わない同居人たちに対して僕は、
「彼らは大人で、僕がきっとまだ子供なんだなぁ」と
なんとなく距離を感じていたのですが、結果的にその距離が
埋まることは無く、話し合った結果、
「人生にも共同生活にも求めているものが違う」ということで
僕が家を出て行くことになりました。
家を出たときにはとても落ち込み、まだ消化不良で
「これで良かったんだ」と自分に言い聞かせて悶々とした
日々を送っていたのですが、gdgd妖精sの製作とコミケに関わって
大きな経験を得た今ならハッキリと胸を張って言うことができます。
彼らから見たら僕はいつまでも子供で社会不適合な変人だったかも
しれない、だけど僕から見たら会社に所属してサラリーをもらい
お金のためにただ言われたものを作るなんて、それはクリエイター
じゃなくてエンジニアです。
エンジニアさんの仕事を悪く言うつもりは全然ありませんし、
プライドを持って技術を売り物にしていることは素晴らしいことだと
思いますが、こと「創造する」ということに関してのみ言えば、
ユーザーの満足よりクライアントの機嫌を伺ってする仕事は
創造の無いただの「作業」です。
本当はクリエイターでありたいのに生活のために仕方なくエンジニアの
仕事をし、エンジニアとしての仕事にプライドを持てなくて
自分をクリエイターだと名乗ることはクリエイターにもエンジニアにも
失礼なのではないかと思います。
クリエイターを名乗るのならばちゃんとクリエイターの仕事を
しなくちゃいけない。
クリエイターとエンジニアでは求めるものも
人間としての気質も全然違います。
誰も作ったことが無いものを作るからクリエイターだし、
挑戦によって人に夢を見せるからクリエイターだし、
何よりもユーザーの満足を最優先にするからクリエイターです!
僕は一社会人としてはマイノリティかもしれない、
でもクリエイターとしてこの物差しは絶対に間違っていない!!
37才と7ヶ月生きてきて、去年末にようやくそんな
クリエイターとしての信念を確信することができました。
残念ながら「畑の違うクリエイタートキワ荘」という
最初のコンセプトが失われてしまっていたので、今となっては
良いタイミングでシェアハウスを卒業できたな、と
とても前向きな気持ちになりました。
(※あ、いや、なんだかすごく暑苦しい人だと思われてしまった
かもしれませんが、前にも書いた通り僕はあまり精神論や
熱い話が得意ではなく、むしろ苦手な方です)
僕にとって人生の大きな大きな転機となった2011年。
これからどんな仕事をするときでも
「そこに新しさはあるのか?挑戦はあるのか?」
「これはユーザーが本当に満足することなのか?」
を最優先に考えて、全ての創作に携わっていこうと思います。
もちろん、毎回うまくいくとは限りません。
挑戦し続ける限り失敗するリスクはゼロではありませんし、
今回のように有能で志が高い仲間たちに恵まれなければ、
うまくいかないことの方が多いかもしれません。
でも、たとえ社会的にはマイノリティで、万人から扱いづらい変人だと
苦笑いされようとも、このスタイルだけは生涯貫き通したいと思います。
January 17, 2012 | 固定リンク
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コメント
このような熱い思いで制作していたのですね…
gdgd妖精sが面白かったのは必然だったのかもしれません。
このお話にとても感銘を受けましたし、
クリエイターの方がこのような考えを持っていると知れて嬉しかったです。
今後のアニメ界も捨てたモンじゃ無さそうだと感じました。
ですが、1点だけ。ひっかかってしまいました…
「エンジニア」と「作業」のくだりです。
はたから見て、創造性皆無のルーチンワークでも エンジニアは魂を込めて「作業」しています。そこにはエンジニアなりの誇りがあります。
なにかエンジニアがお金の為にしか動かない様な印象を受けてしまいました。
私が穿った読み方をしてしまっているのは、重々承知していますし
「言いたい事はそうじゃない」って事も理解できています。
変な所に突っかかってしまい、申し訳ありません。
これからもgdgd妖精sの様な面白いモノを作って下さい。応援しています。
投稿者:イナカモノ at Jan 18, 2012 5:40:28 AM
コメントありがとうございます!
失礼しました、そうですね、確かにおっしゃるとおりです!
クリエイターだと思って一緒に住んでいた相手たちが
自称クリエイターだけど仕事内容としてはエンジニアで
全然生活スタイルや気質が違ったために共同生活がうまく行かなかった、
そしてその時は「僕が変人だからだ」という雰囲気になっていたんですが、
今考えればエンジニアの人が自称クリエイターなんて言うから
紛らわしかったんじゃないか!
クリエイターはある程度変人でもそれが普通なんだよ!
と言うことを書きたかったんです。
全然エンジニアさんを悪く書いたつもりはありません。
後で時間がある時にでも書き直しますね!
投稿者:(石) at Jan 18, 2012 1:52:17 PM
書き直してみました。
伝わりますかね??
投稿者:(石) at Jan 18, 2012 6:16:04 PM
この記事を読んで思った事を書いてみます。
サラリーの有無、プロダクトオーナーの有無というのは、実は相当に大きい。
でも、それが与えている影響って、ある程度年とらないと気がつかないんですよね。
具体的には35歳超えてから。なんでかっていうと、ぶっちゃけ、転職、就職しづらくなるから。日本では。
それまでは、オレはサラリー貰っているけど、いざとなったら出て行くんだぜ!とかそんな事考えてたりする。
でも、その時点で実は保障付の考え方なんですよね……。
エンジニアって言葉の使い方について。この石館さんの文脈では、エンジニアとクリエイターの違いって次のように言い換えられるかも。
エンジニアは、誰かの役に立ちたい人。
クリエイターは、誰かの時間を特別にしたい人。
ヤマトの真田さんが、こんな事もあろうかと、とか言って出す発明の数々はプロジェクトを達成する事が目的ですよね。
誰か個人の時間を満足させるためじゃない。でも、クリエイターっていうのは、誰かの時間を満たす事に喜びを感じるんです。
森雪の着替えを覗く機械とか。(笑
とか。
上手い具合に補足になっているといいなー、と思いつつ、自分でも誰かに伝えたいことかも。
でも、合ってなかったらスミマセン。
投稿者:がんたん at Jan 27, 2012 4:29:59 AM
>がんたんさん
コメントありがとうございます!
なるほど、端から見たらそうなるのかもしれません。
実はクリエイターの内側から見てしまうと、
「自分にしか作れないものを作る」
「まだ世の中にはない新しいものを作る」
という部分が重要で、それがないのにお金のために
作りたくないものを作るということが
まるで魂を売ってしまったかのように感じるんですよね。
エンジニアとしての志もないのに食っていくために
エンジニアのフリをする、という感じでしょうか。
「真の意味でクリエイターじゃないのにクリエイターぶる」とか
「エンジニアのプライドも志もないのに、仕方なくエンジニアをやる」
っていうのが良くないことだな、と感じました。
クリエイターなら一般常識や調和よりも優先するべきことがありますから!
投稿者:(石) at Jan 27, 2012 3:40:25 PM
石館さま
はじめまして。
gdgd妖精s の大ファンの者です!
もちろん、blu-ray 全巻予約済みなどなど。
下手糞なネットサーフィンによって、貴殿のブログにたどりつき、
gdgd に関するブログ記事1〜6、その他アニメの魅力など拝読させて頂きました。
感動しましたね。
そして、本日、突然思いついてしまった企画をお伝えしたく、本コメント欄を利用させていただくことをお許しください。石館さんのメアドなどの連絡先を存じ上げませんものですから。もしくは、twitter (@decsci) 経由のほうが常識的なのかもしれませんが、その場合、メディア・リテラシー不足の失礼をおゆるし下されば幸いです。
さて、早速ですが、企画内容です。
私は、現在、東京工業大学という大学で助教という一番下っ端の身分の教員をやっております。
2012年度春学期、私担当の大学講義一コマ(90分)分を、特別講義として、本記事のテーマ「クリエイターとエンジニア」にまつわる形でお願いできないかというご相談です。
講義情報については、
http://www.ocw.titech.ac.jp/index.php?module=General&action=T0300&GakubuCD=150&GakkaCD=150&KougiCD=0187&Nendo=2011&Gakki=1&lang=JA&vid=03
もしくは、
http://www.valdes.titech.ac.jp/~nkoba/rationalanalysis/
をご覧いただければと存じます。
石館さんは、gdgd のおかげで、私の中では神格化してしまっていますが、
このブログのコメントに丁寧にお返事なさっているのを拝見し、
おお、意外とまだ近い距離にいらっしゃるのかも
と思い、上記のような企画でご相談を持ちかけさせて頂きました。
どうぞ、よろしくお願いします。
なお、光栄にも、ご連絡いただけます場合、
最初のご連絡としては、
本コメントに付記させて頂きましたメアド、もしくは大学のメアド、twitter、本コメントへのレスなどのうち、ご都合のよろしいメディアを使ってくださればと存じます。
(つまり、本ブログは、これから数日間、最低一日一回の頻度でチェックさせて頂きます)
初対面で、いきなり踏み込んだご相談、もしくは失礼もあろうかと存じますが、
gdgd 制作のスピード感を鑑み、いきなり思いつきをお伝えさせて頂きました。
投稿者:Decision Science at Feb 4, 2012 1:42:20 PM
石館さま
先のコメントは、具体的な問題意識を書かずに大変失礼しました。
若干補足させてください。
後日、ちゃんとした小論を寄せられればと思っていますが、
現時点での問題意識としては、以下の短い記述でお許しを。
おっしゃる
「クリエイター」と「エンジニア」を両立させたい。
東工大の学生諸君には、そういう人材として巣立って欲しい。
私の感覚では、東工大の優秀な学生諸君は、彼らの頭脳の気質から言って、
放っておいてもものすごく優秀なエンジニアにはなると思いますが、
クリエイターを「正しく目指す」ことは、目指すだけでもものすごく大変だと思っています。
また、より大きな文脈では、世界経済において、
仕事が人生の一番大事なコンポーネントを構成する人たちは、全て多かれ少なかれクリエイター的になれること
(それ以外は、原則機械化)
が夢みたいな感じです。
上記の best practice が gdgd妖精s だと理解していますので、
万が一お時間などありましたら、何らかの形でお力を貸していただければ光栄と思った次第です。
どうぞ、よろしくお願いします。
投稿者:Decision Science at Feb 4, 2012 8:57:35 PM
>Decision Scienceさん
コメントありがとうございます!
うちは祖父、父と代々薬学の大学教授でした。
僕は別の畑で自分の研究をしたいと思い薬学の道へは
進みませんでしたが、晩年は教壇に立ちたいなぁというのが
密かな夢でした。
まさかこんなに早くそんなお話をいただけるとは
みっても見ませんでしたが(笑)
後ほどメッセージをお送りさせていただきますね。
ありがとうございます。
投稿者:(石) at Feb 5, 2012 11:03:28 AM
