僕たちはゴルバチョフに近づいているのか


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某クラブで、とても懐かしい友人に偶然出会いました。

大学時代の友だちです。僕は大学には3人しか友だちがいなかったのですが、そのうちの1人です。

お互いびっくりして、昔話に花が咲いて……当時僕が疑問を抱いていた「彼のひと言」についての話になりました。

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「彼のひと言」。それは、就職活動の頃に遡った話です。

当時僕は、あまり就職する気がなく、踊りとかDJとかイベント企画とかでなんとなくやっていけるかもしれないみたいな考えを持っていました。時は就職氷河期。行きたいと思っていた会社はことごとく「今年は新規採用なし」という告知を出していたのも、就職活動へのモチベーションを下げていました。

そんなある日、あれは渋谷のTHE ROOMででしたか、同じく大学4年生の彼と話していて、就職の話になりました。

彼は言いました。

友人:「(就職氷河期の)今、就職活動をしないのは、単なる逃げに過ぎない」

ああその通りだ、と僕は思いました。自分はなんて軟弱だったのだろう。このままでは、いつまでも自分は世間のあぶくのような存在じゃないか。

僕は彼はなんて大人なんだろうと、尊敬しました。そして、ポツリポツリと、将来の夢のようなことを語り合いました。
 
 
 
それはなんというか、充実したひと時でした。僕ら2人は、人生のとば口にいて、まるで予想できない未来に思いをはせ、同時に自分の内側を見つめ、互いに「本当に思っていること」を言葉にしようと苦心していました。

しばしの沈黙の後、彼は、思いつめた表情で、こう言いました。
 
 
 
友人:「オレは、ゴルバチョフになる」
 
 
 
え?
 
 
 
全然意味が判りませんでした。ゴルバチョフ? あの政治家の?
なんで? なんでゴルバチョフ!?

でも僕は「それどういう意味?」と聞くことができませんでした。せっかく互いに判り合ったような気になっていて、シリアスに、普段他の人には言わないようなことを話し合っている雰囲気なのに、水を差すようなことはできません。

彼は、「ゴルバチョフになる」と呟いたまま、次の言葉を発しません。

一切のヒントはナシ。僕はどう返すべきか。
 
 
 
さっきよりも長い沈黙の後、僕は、こう呟きました。
 
 
 
僕:「……じゃあオレも、ゴルバチョフになる」
 
 
 
いや自分でも何言ってるか全然判らないわけですよ。でも当時はそれが最適の答えだと思ったんです。

目の前の友人とは実は全く判り合ってなかったということを、意外な形で思い知らされ、そうやって青春時代のある夜は更けていきました。

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なんて話を、あれから10年くらい経った今、彼と交わしました。
彼も「あの時のことは覚えているけど、自分がなんでそんなことを言ったのか、全く判らない」そうです。
お互いあの時は爆弾みたいに頭が悪かったよね、といった話をして、別れました。
 
 
 
ほんと、どういう意味だったんだろう……
まあいいか。あの夜のおかげで、僕は就職活動をちゃんとやる気になり、そして就職し、一応の実績を積みつつあるわけですから。
感謝しなくてはいけません。友人と、ゴルバチョフに。
 
 
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