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lily vol.2
「繭、まゆ!」
ケータイいじりに没頭していて、しばらくは自分を呼ぶ声に気づかずにいた。
顔を上げると、そこはいつもの狭い自分の部屋で。いや、私達の部屋で。
「ちょっとー。機械とばっか会話してないで、私の話も聞いてよ!」
向かいのベッドに座ってオーバーアクションしているのは、寮のルームメイト、亜紀だ。亜紀も私も、実家が遠いので、高校2年生ながら女子寮で生活している。
「ごめんごめん、自分の世界に入ってた……」
「繭も、もうちょっと人間に興味もつようにしたほうがいいんじゃない?」
「亜紀が異常に興味持ちすぎなんじゃないの」
ベッドにごろりと転がると、白い天井が目に付く。
亜紀ときたら、動くものすべてをカップルに仕立て上げることのできる、究極の腐女子とやらで、花の女子高生だというのに彼氏の話ひとつしない。
たまに男子の話をすると、彼は絶対彼のコトが好きなのよ!とかそんなのばっかりで、聞いてるこっちの方の頭が痛くなってくる。
「まあいいから聞いてよ!昨日夜中にコンビニに買い物行ったらさ、大学生くらいの男がふたりで買い物してんの。パンとか牛乳とか一緒に選んでさー。あれきっと朝食用だよね!絶対お泊り確定だよ!しかもふたりともタイプが違ういい男で、すっごいイイの!完璧!」
なにが完璧なのかわからない。シーツの上に置いたケータイを無意識に指でまさぐる。
(もうちょっと人間に興味もつようにしたほうがいいんじゃない?)
「私、少し変わってきたかも」
もし、これがその前触れならば。
「人の話、聞けよー!」
ケータイの画像フォルダの中、1点だけ風景以外を写したものがある。
長い黒髪をふわりと風にのせ、光の射す道を駆けていく女の子の後姿を。
July 13, 2004 in lily_百合編 | 固定リンク
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