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lily vol.7
清冽な印象の黒い瞳。若竹のように伸びた肢体。
ファインダー越しに見える沙耶は、別の次元にいるように現実感がない。
シャッターを押す次の瞬間、捕らえたかった沙耶の印象は、滑り落ちるように消えてしまっている。
(駄目)
レンズの向こう側に目を凝らす。
桜の幹に片手を預け、ゆっくりと歩みを運ぶ革靴の足先。
制服の肩に落ちかかる漆黒の髪。
風に煽られて膨らむスカートの裾。
気恥ずかしそうに逸らす視線。
それらすべてをシャッターで、ひとつひとつ切り取っていく。
指先で触れるように。存在を感じ取るように。
桜の枝先から雲に覆われた空へ、レンズの視界が急に回り込む。
浮いた根に躓いたことに気づいた一瞬の後、背中から地面へと叩きつけられた。
咄嗟にカメラを抱え込んだせいで打ち所を間違えたのか、おかしなところが痛む。
「勅使河原先輩!」
慌てて駆け寄ってきた沙耶が、心配そうに覗き込んでくる。
「……その呼び方変えてほしいんだけど……」
「え?」
「繭でいいよ」
July 21, 2004 in lily_百合編 | 固定リンク
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