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lily vol.8
「呼びにくくない?勅使河原先輩って」
「それは……そうですけど」
戸惑っていた沙耶の口元に笑みがこぼれる。
「じゃ、繭先輩で。弓道部だとよく先輩をこういう呼び方するんです」
胸の奥がずきりと痛んだのは、背中を強く打ったせいだろうか。
指先を伸ばして沙耶の頬の輪郭に触れると、手の甲に甘い痺れを感じた。
不意に凶暴な衝動に駆られて、沙耶のうなじにかけた腕を引き寄せる。
「ひゃっ」
胸に加わる人の重み。肩越しに、沙耶の呼吸を感じた。
「繭……先輩?」
困ったように身動ぎする身体をきつく抱き寄せる。
時が止まったような錯覚。
ひらり、と風に吹かれた桜の花弁が沙耶の髪に絡まってとまるのが見えた。
制服の肩に、背中に、袖口に。
瞳を閉じても、暗闇の中で白い花弁は狂ったように舞い散り、沙耶の姿を隠すように降り積もった。
July 25, 2004 in lily_百合編 | 固定リンク
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