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lily vol.9
部室の机に現像し終わった写真を並べる。部室に併設されている暗室は、狭いけれどもけっこう役に立つ。
軽く部室の扉を叩く音がして、亜紀がガラス窓から顔を覗かせた。
「繭、何かネタない、ネタ。部誌の締切が明日でさ、すっかり忘れてたんだよねー……ってそれ何?新しい写真?」
止める間もなく、扉を開けると机に近づき、しげしげと写真を眺めはじめる。
「また校舎の壁とかつまんない写真かと思ったら、珍しいじゃん、繭が人間撮るなんて」
「たまにはね……何事も勉強です」
面白そうに何枚かの写真を見比べているうちに、亜紀の表情が少し曇った。
「繭さ、この娘のこと、どう思ってんの?」
「なんで?」
部室の棚からファイルを取り出そうとしても、指が震えて目標に届かない。
「うーん。なんでだろう。明らかに視線が違うんだよね」
撮ってる人の。撮られてる人の。
「悪いことは言わないから、やめといた方がいいよ。もし繭がこの娘に特別な感情をもっているなら」
甦るのは、目を閉じても降り積もる、白い桜の花弁。
身体を起こすと、振り返ることなく走り去っていく沙耶の後姿。
「そんなこと……ないよ」
「ならいいけど、繭ってなんかひとつに集中すると、周りが見えなくなるタイプだから。気になっちゃって」
あはは、と無理に笑ってみせると、つられて亜紀も少し笑った。
「BL好きの亜紀にそんなこと言われるとは思わなかったな」
「あーっ。BL好きを甘くみるなよ!言っとくけど、未来のない関係ほど、不思議に美しいものなんだから」
July 31, 2004 in lily_百合編 | 固定リンク
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