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lily vol.10
部室を出て、夕方の空を見上げると、今にも降り出しそうなグレーの雲が立ち込めている。
(未来のない関係……か)
この思いの先にある、未来はどんなものだろう?
置き傘を取りにいこうと教室に向かう途中、渡り廊下の向こうに沙耶が歩いているのが目に入った。考え事でもしているのだろうか、視線は床に落ち、足の運びもゆっくりとしている。
「小田桐さん」
呼びかけると、沙耶はこちらを振り向き、こぼれそうなほど目を見開いた。
「近づかないでください」
叫ぶように言い捨てると階段を駆け下りる後姿を、無意識のうちに追いかけていた。
がらんとした教室の前を。錆付いたロッカーの横を。埃っぽい昇降口を、上履きのままで駆け出していく。校舎の外に走り出ると、ぱらぱらと振り出した雨が首の後ろに落ちて、制服の下に冷たい筋を作った。
August 2, 2004 in lily_百合編 | 固定リンク
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