薔薇と百合の狭間に咲く花の香り

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lily vol.11

影のような紺色の制服。沙耶の後姿を追って、校舎の裏手の道を駆ける。
見覚えのある細い小道。
足元に落ちる弓道の矢。慌てた沙耶の、額の汗の輝き。
そんな光景が、一瞬で脳裏に甦り、すぐに消えた。
だんだんと激しくなる雨が作った泥濘で、白い上履きが汚れていくのも、意識の内に入らない。

裏庭に入ったところで、沙耶の腕に手が届いた。
「小田桐さん」
手首を掴むと、沙耶は観念したように歩調を緩めた。
「どうして……あんなことをしたんですか」
ぽつりと呟くと、沙耶は俯いていた顔を上げ、もう一度思い切ったように口を開いた。
「私は……繭先輩の何なんですか!」
沙耶の長い髪が、雨に濡れて普段と違うシルエットを形作っている。水滴が滑らかな頬を伝い、細い顎で雫になって、襟元にこぼれ落ちた。

「ごめんなさい……私にもまだよくわからない」
定義する前から、崩れてしまいそうな思い。
それでも、確かなのはその存在の重さで。
「小田桐さんのこと、まだ何も知らない。共通点だってない。でも、貴女は私にとって特別なの」
「繭先輩」
狼狽したかのように後退りした沙耶が、泥濘に足を取られて蹈鞴を踏む。
「ひゃっ」

August 7, 2004 in lily_百合編 | 固定リンク

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