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「てさぐれ!部活もの』製作後記(中編)
さて、書きたいことを忘れないうちに続きを。
「てさぐれ!部活もの」のセカンドシーズン「あんこーる」を
製作するにあたって僕が考えたことです。
どうしても1期より全てがパワーダウンしてしまう製作環境で
唯一「勝算」が持てたのは「キャストの信頼関係が成熟している」
ということ。
しかし、これのみに頼るわけにはいきません。
どんなコンテンツでもそうですが、「ぶちこわす面白さ」を作るのは
簡単です・・・1回きりならば。
第2期も全12話あるわけで、ただぶち壊すだけでは「出オチ」で
終わってしまいます。
12話走りきるためには「ぶち壊し」ながらも、新たに「積み上げる」
作業をしていかなくてはなりません。
積み上げた状態だからこそ、ぶち壊すことが面白くなるんです。
そこで、まず第一に僕が製作委員会にお願いしたのは、
「序盤で画が間に合わないことを遊びにする」
ということでした。
第1話の総集編、第2話の静止画、第3話の映像使い回し。
単純に序盤は映像の制作が絶対に間に合わないだろうということも
ありましたが、この「遊び」は「この作品」の「このタイミング」でしか
許されないものでありながら、第2期のハードルを下げてくれるという
構成上不可欠な要素でした。
(正直言うと第4話で「実写」というのもかなり真剣に
考えていたのですが、4話もやるのはさすがにシリーズの
バランスが悪いということと、たつきくんが「アニメを作りたい!」
と熱弁してくれたことを受けて、今回は諦めることにしました)
最初にあれをきちんと「笑い」に変えておかないと、その後の
1期に至らない部分も、キャストのアドリブの自由さも、
ユーザーさんたちが受け入れられないだろうと考えたためです。
これがまず第1の「保険」であり、この遊びを許してもらえたことが
2期を引き受けるにあたり、僕の中で大きな原動力となりました。
2つめの「保険」。
オープニングを2番にしたのは、新曲にすると「新たなる挑戦」を
イメージさせてしまうため、ハードルが上がってしまう恐れがあると
感じたためです。
かといって変えないのも期待を裏切ることになるだろうと、
あえて同じ曲の2番を使うことにしました。
内容的にも「あんこーる」のイメージに合っていましたし。
そこへ「冒頭のセリフ、みんなでやりませんか?」と
提案してくれたのは、実は明坂さんでした。
その言葉を聞き、オープニングが2番になってその冒頭のセリフを
キャストに遊んでもらう・・・これは「あんこーる」の楽しみ方を
ユーザーさんたちに分かりやすく提示する絶好の演出だ!としびれました。
明坂さん的にはゆあが言っていたオリジナルのセリフを持ち回りで
やるのも良いんじゃないか?というニュアンスだったように感じましたが、
せっかくなのでどんどん自由に、何を言っても良いことにしました(笑)
エンディングも新たにダンスを作れないということで、序盤は完成した
ダンス映像を使い回すことが必須になりました。
そこで井上に、同じ曲をそれぞれのキャラの気持ちで歌う詩を
作ってほしい、と頼みました。
イメージは「ハレ晴れユカイ」の各キャラバージョンのキャラソンです。
1期の最終回を見終わったユーザーさんたちに、4人がどんな気持ちで
1期の12ヶ月間を過ごしていたのか?その「答え」のようなものを
エンディングの歌で「積み上げ」たかったんですね。
2期の最終回へ向けて。
3つめ。
井上にはもうひとつ、テーマソングを作って欲しい、とお願いしました。
というのは、2期では「何かひとつ、1期にはなかったタイプの回」を
作りたかったためです。
冒頭で画が間に合わない遊びをする、キャストの悪のりを主軸にする、
その2つだけではまだ「ぶち壊す面白さ」でしかなく、
そうじゃない前向きな面白さで2期にしかない要素をどうしても
ひとつ作りたかったんですね、悪ふざけの「保険」として。
真っ先に思いついたのは「文化祭」でした。
1期8話のアヴァンで文化祭ネタを扱った際、コメントで
「本編は文化祭関係ないのかよ!」というツッコミをちらほらと
見かけたことがキッカケです(笑)
井上には『ハルヒちゃん』の「いままでのあらすじ」を
イメージ曲として渡し(…またもやハルヒで京アニさんすいません)、
出来上がってきたのがご存知『てさぐり部部歌』です。
この曲のあまりの出来の良さに衝撃を受け、ここで初めて
「2期、いける!」という手応えを感じました。
これがあれば、多少度が過ぎた悪ふざけも許容してもらえるはず!
という免罪符?…いや、希望の光でした。
ちなみに、活用形の「てさぐ【れ】ない(未然)」と、
「連【帯】」の誤字は井上から上がってきた詩を僕が
直させてもらったときにミスしてしまったものです・・・
大変失礼いたしました。
(まさか発売されるまで誰も気がつかないなんてっ!!!)
まぁ、ゆあが一晩で作ったという設定だから(いいじゃん)
映像的には絶対に間に合わない部分もあるだろうと
「カラオケを流している」という保険をかけましたが、
まさかあそこまでクオリティの高いアニメーションをつけて
もらえるとは思いませんでした。
たつきくんをはじめ、アニメーターさんたちの熱意に心から
感謝しています。
というわけで、3つの「保険」のうち2つは井上による「歌」でした。
いつも井上の歌には助けられていますが、特に「あんこーる」は
「内容」でぶち壊し、「歌」で新たに積み上げる、という
おそらく前代未聞の構造だったわけです。
というわけで僕の中では、シリーズ構成的に「あんこーる」の
【スタッフMVP】は音楽・井上純一でした。
ああ、終わらなかった・・・。
次回こそは(後編)、最後の「保険」、最終回についてです。
April 8, 2014 | 固定リンク | ()
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