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『ひもてはうす』制作後記(2)〜もう一歩アニメの内側へ〜
アニメ『ひもてはうす』を応援してくださった皆様への感謝の気持ちと制作裏話、続きです。
前回の内容でも軽くご紹介しましたが、「これまでの作品を知ってくださっている人と初めて見てくださる人の双方にお楽しみいただける内容を目指す」というのが今回の大きなテーマのひとつでした。そのための作戦のひとつは前回ご紹介した通りです。
これまでの作品を知ってくださっている方にはまずキャスト的にドリームチームだという部分が一番の魅力になるだろうと思ったのですが、逆にそれが初めて見てくださる方に内輪受けだと感じさせて疎外感を与えてはいけないと思い、いかに内輪受け感を出さないようにするかの対策を練ることにしました。
そしてそのためには「これまで以上にちゃんとアニメ作品にしなくてはいけない」という結論に至りました。
これまでははっきり言ってしまうと「アニメをふりをしたバラエティ番組」が多かっただろうと思います(『直球表題』だけちょっと違うかな?)
とんねるずさんがドラマのパロディコントをしているような構造です。
今回はもう一歩アニメの内側に入り込むことで、いつもの「悪ふざけ」をこれまでとはまた違った切り口で効果的に打ち出せないかと考えました。
ひとつひとつについて詳しくは触れませんが、もう一歩アニメの内側に入るために具体的にはこんなことをしてみました。
・メタ禁止
・序盤話数でキャラの魅力を丁寧に見せる
・定番である野球回、お風呂回を入れて、この作品らしく料理する
・主題歌やキービジュアルは「ありそう」なものではなく、あくまでアニメ作品として新しさがあって魅力的なものにする。
(つまりアニメの外側からアニメに寄せるのではなく、アニメ作品として新しい挑戦という形にする)
・アドリブパートはパジャマに着替えさせて基本レイアウトを固定することで「おまけ」である印象を強調する
・分かりやすいパロディをふんだんに盛り込む
…などなど。
できるだけ内輪受け感を排除し、より多くの方々に楽しんでもらえるよう、これまで一貫したテーマだった「アニメが好きな人たちへ向けた気の利いた箸休めの小鉢を作る」というスタンスを、さらに間口を広げた形にすることを意識しました。
これまでの作品でも常にコアユーザーさんとご新規さんの双方が楽しめるよう心がけるというのは考えてきたのですが、今回はこれまで以上に大胆に振り切りました。
なのでコアユーザーさんたちにとっては「深夜番組がゴールデン帯になっておとなしくなった」ような寂しい印象を与えてしまうことでしょう。
そこで、これまでにはない挑戦もいくつか構造的に盛り込むことにしました。
ひとつは「男女双方に楽しめる内容にする」ということ。
ちょっと生々しい成人女性を描くことで、同年代の女子が共感出来る内容に。
また、同性としてちょっと小馬鹿にして笑えるところもありつつ、どこか「こんな友達がいるっていいな」「こんな共同生活楽しそうだな」と羨ましく感じられる部分を作ることを意識しました。
男性には「だからモテないんだよ」と笑えるように、それでいて「こんなことで悩んだり、つまらない努力を本気で頑張ったりしているんだな」「女子もこんなくだらない遊びでキャッキャしたりするんだな」というところを可愛く頬笑ましいと感じてもらえるような構造を意識しました。
ギャグアニメで、男女がそれぞれの楽しみ方をして会話のネタになる作品ってあんまり無いように感じたので、それが実現できたらとても有意義な挑戦ではないかと考えました。
ふたつ目は、「早く触れ始める人、オンエアから触れ始める人でそれぞれに楽しみを用意する」ということ。
放送前イベントや先行して始まった『ぐいぐいプレゼンラジオ』を効果的に使うことで、放送前からチェックしてくれている人にはより愛着が湧き、アニメ放送期間を一緒にお祭りのように楽しめる構造を意識しました。
事前に内容を知っているからこそいざ画がついたときの発見があったり、音声で聞いていなかった部分が逆に新鮮に感じたり、オンエアから触れ始めた人たちの反応を楽しめたり。
この人たちにはもう田丸さんが出てくるだけで笑えるような状況が作れるのではないかと考えました。
また、オンエアで初めて触れる人は原作が無いはずなのに丁寧に解説してくれる人がいて、これまでの作品よりも初見さんが入り込みやすい環境を意識しました。
この構造も初めての実験的な挑戦でした。
みっつ目は「バカバカしく笑いたい人、深読みして楽しみたい人それぞれに楽しみを用意する」ということ。
基本的にはモテない成人女子たちの取り留めのない会話劇です。それ以上でも以下でもありません。
だからこそそこに深読みできる要素があっても面白いのではないか?と考えました。
別に気にしない人はまるっと無視しても普通に楽しめる、だけど気がついた人には同じ内容なのに全然違って感じられるようになる・・・こっそりとそんな遊びを盛り込むことでこれまでの作品にはなかった新鮮味を出せるのではないか?
実は「異能」というものを題材にするにあたって、その設定を意外と細かく作ってありました。
本来は本編内に出す予定のない裏設定だったのですが、『ひもてはうす』という作品に挑戦的な要素を増やしたいと思い、この作品ならではの遊び要素としてそれをちょっとずつ匂わせてみることにしました。
この「謎」要素は『名探偵コナン』で言えば「黒の組織」のようなもので、各話の内容とは直接関係がないことが多い、でもシリーズを重ねていくごとにゆっくりと判明(&解決?)していくかもしれないもので、ミステリーがお好きな人が各々想像して楽しめる要素になってくれればと思っています。
上記の通り、全体的にとっかかりとしてはこれまでよりもかなりおとなしく間口を広げて、しかし前半と後半の構成、ラジオやイベントを含めた構造、より深く楽しみたい人向けのミステリー要素などなど、これまでにはない実験的な挑戦を盛り込んで、全体像としての「『ひもてはうす』らしさ」を構築してみました。
いかんせん初めての挑戦を複数の要素で重ね合わせていますから、うまくいった部分もあるでしょうし、うまくいかなかった部分もあることでしょう。
また次回に続きます!
January 6, 2019 | 固定リンク
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