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『ひもてはうす』制作後記(4)〜ゴキブリ退治回のお蔵入り〜
アニメ『ひもてはうす』を応援してくださった皆様への感謝の気持ちと制作裏話、続きです。
さて、これまでは「全体的に新規ユーザー&ライトユーザーさんに偏ってコアユーザーさんを寸止めにしてしまった」という反省点でしたが、今回はまたちょっと違うお話です。
実はもう一つ大きな誤算がありました。
いや、誤算なんていつもたくさんあるんですけれど、最終的にイメージしていた形にリカバリーができなかった反省材料、という意味でもうひとつありました。
それは当初第9話に予定していた「ゴキブリ退治」のエピソードがお蔵入りになってしまったことです。
放送期間の中盤、スケジュールを大幅にオーバーしてすでにいっぱいいっぱいだったアニメーション制作がさらに佳境に入り、このまま「ゴキブリ退治」回を制作するのは危険だ、ということになりました。
バトル回というのは動きも大きいですしカット数も多くなります。
会話劇と違って「画で魅せる」という要素が大きくなるためおそらくリテイクも多くなるだろうと予測されます。
同じく「画で魅せる」必要がある「お風呂回」の方はまだ静止画で乗り切ってもバカバカしく見れますが、バトルはどうしても動いていないと成立しません。
アニメーション制作のカロリーがとても高いんです。
この回は久々に異能が活躍するエピソードですし、共同生活感の強いいわば『ひもてはうす』らしいエピソードでした。
紐手ときよと桃園しばりの物語にも大きく関係しますしシリーズ構成的にとても重要な回だったのですが、「下手すると9話以降すべて納品が出来なくなる」という最悪の事態を避けるため泣く泣くお蔵入りを決定しました。
すでに音声の収録は終わっていますので、代わりに放送できるものはひとつしかありません。
そう、オールパジャマパーティー回です。
苦渋の選択ではありましたが、これはチャンスでもあると感じました。
前回ご説明した通り「キャララジオ」がコアユーザー向けの救済としてはあまり機能していなかったこともあり、放送序盤から「全編パジャマパーティーでいいだろ」という感想をたくさん拝見していたからです。
おそらく『gdgd妖精s』や『てさぐれ!部活もの』などこれまでの作品をご覧くださっている方々のご意見だったろうと思います。
せっかくならできるだけその方々の声にお応えした内容にして、コアユーザーさんたちの不完全燃焼感を多少なりとも払拭したいと考えました。
まず、あらたなる音声編集が必要なのでそのスケジュールを確保すべく、本来第10話予定であった「コピー機」の回を第9話に前倒すことにしました。
第8話もアドリブの多い回だったのでそこと少し離したいという狙いもありました。
本来の予定では
第9話 「ゴキブリ退治」「名言(見せパン、TPP)」
第10話 「コピー機」「お散歩(生殖器いてぇ)」
第11話 「お風呂」「危機回避(魂のソウルメイト)」
第12話 「緊急特番」「モテたいんじゃ」
でしたが、「コピー機」を前倒ししたことにより
第9話 「コピー機」「名言(見せパン、TPP)」
第10話 「???」「???」「お散歩(生殖器いてぇ)」
第11話 「お風呂」「危機回避(魂のソウルメイト)」
第12話 「緊急特番」「モテたいんじゃ」
と、パジャマパーティーを2本、未公開から本編に採用することが必要になりました。
「全編パジャマパーティーにしろ」とおっしゃっている方はきっと『てさぐれ!』がお好きな方が多いだろうと思い、1本は「新しいアピール」を採用することにしました。
問題はもう一本でした。
実は桃園しばり役の木野日菜さんが参加した収録自体が少なかったため、本編のこのタイミングで採用するのにふさわしい音源が「許せる女・許せない女」しかなかったのです。
ご覧くださった方はお分かりかと思いますが、この「許せる女・許せない女」はちょっと面白さのベクトルが違う内容で、収録に全員が揃ってただただ女性が共感できそうな雑談をする、という、パジャマパーティーとしてはちょっと特殊な回でした。
(実は木野さんが初参加の収録だったために、この特殊な収録方法と環境に慣れてもらおうと用意したアイドリング企画でした)
試しにこれを「新しいアピール」と段積みにして構成してみたのですが、面白いけれどちょっとダラっとした印象といいますか、画代わりの無さが気になる内容になってしまいました。この後に来ると「お散歩」もちょっと浮いて感じてしまう出来でした。
不完全燃焼感を感じているコアユーザーさんたちに喜んでいただくにはもっと大きな緩急を作る必要があると感じました。
そこで、これも苦渋の選択でしたが、第11話用に残しておいた「危機回避(魂のソウルメイト)」を第10話に持ってくることにしました。
それなら「これこれ!これを待ってたんだよ!」と言っていただける全編アドリブ回に仕上がるだろうと考えました。
最終的にはこのような構成になりました。
第9話 「コピー機」「名言(見せパン、TPP)」
第10話 「新しいアピール」「危機回避(魂のソウルメイト)」「お散歩(生殖器いてぇ)」
第11話 「お風呂」「許せる女・許せない女」
第12話 「緊急特番」「モテたいんじゃ」
さて、これによって何が起こったかというと・・・第11話のインパクトが薄れてしまったんですね。
そして、第10話「コピー機」「お散歩(生殖器いてぇ)」、第11話「お風呂」&「危機回避(魂のソウルメイト)」というぶっ飛んだクレイジーな回の後だからこそもっとも効果的になると計算していた「特に大きな花火を打ち上げずにスッと終わる最終回」の効果が弱まってしまったんです。
これには単純に「危機回避(魂のソウルメイト)」の破壊力が高いというだけではなく、「許せる女・許せない女」と「モテたいんじゃ」の方向性が少し似ているということもあります。
どちらも選手権という挑戦企画コーナーではなく、自然体で進行するコーナーなんですね。
それによって「最後の最後はなんでもないゲームをやって自然体で楽しんでいる住人たち」という、あえて「普通」を見せることでロスを強調する終わり方がいまいち心に引っ掛かりづらい構造になってしまいました。
150キロの速球の後にチェンジアップで三振を取るプランだったのですが、135キロのストレートの後のチェンジアップになってしまったイメージです。
こうして「ゴキブリ退治回」が失われ、キャララジオの誤算を取り返そうとオールアドリブ回の満足度を高めた結果、最終回の効果が半減してしまう・・・という、なんとも苦々しいドミノ式の誤算となってしまいました。
とはいえ「事故なんだ!俺は悪くないんだ!」なんてことを言いたいわけでもありませんし、ましてや「『ひもてはうす』は失敗だった!」なんてことを言いたいわけでもけっしてありません。
誤解しないでくださいね!
そのあたりの総括、次回に続きます!
January 12, 2019 | 固定リンク
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