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『ひもてはうす』制作後記(5)〜最終回と総括〜
アニメ『ひもてはうす』を応援してくださった皆様への感謝の気持ちと制作裏話、今回がまとめです。
前回は「ゴキブリ退治回」が制作できなくなり、そこでキャララジオの借金を返そうとしたことにより後半のシリーズ構成が大きく揺らいでしまった、ということを書かせていただきました。
さて、続きです。
それによって今度は何が起きたかというと、12話が想定以上にフルスイングしてしまったんです。
シリーズ構成という枠組みを失ったことにより、単話でのネタ要素が突き抜けてしまったんですね。
最終回の12話はネタ的に
・納品が間に合わなかったアニメ作品への皮肉を込めたアニメ業界ブラックジョーク
・低予算バラエティ番組のやっつけ感への皮肉を込めた実写バラエティ業界ブラックジョーク
・いつもアドリブでの収録をしているアニメがあえて台本ありでコテコテのバラエティ番組回をやるという自虐的ブラックジョーク
・豪華キャストを謳いつつゲストMCが一番豪華という構造的皮肉
・で、そんな中で「謎」については丁寧に整理しつつ、最後はみなもの妄想という9話のネタ、たえへのサプライズの仕返しという6話のネタで『ひもてはうす』らしくまとめ、「モテたいんじゃ」で何事もなかったかのように終わる
そんな皮肉まみれのブラックジョーク+妄想オチ回でした。
これはシリーズ構成がもっと機能していたらちょうどよく丸くなる、つまりネタとして受け止めやすくなるプランだったのですが、それがなくなったことによって想定より少々ドギツくなってしまいました。
楽しみどころが伝わらりきらずぽかーんとしてしまった方もいらっしゃったかもしれません。
そして、これによってまた全体に変化がありました。
この「制作後記」の(1)に戻って、シリーズの前半と後半で作戦を大きく変えることにした、という話です。
ご説明した通り諸般の事情によって10話はパジャマパーティーに振り切り、12話は最終回らしさを失ってブラックジョークに振り切る形になった結果、当初予定していた前半と後半のコントラストに関しては想定以上に大きなものとなりました。
前半は丁寧に世界観とキャラを作り上げて後半は一気に挑戦的な内容にする、ということに関しては、より大きな緩急を作り上げる結果となりました。
もう一点、「制作後記」(2)で書かせていただきました「もう一歩アニメの内側へ」ということに関して。
実はアニメの内側に入ることを意識しなくてはいけないからこそ崩せない、これまでのようには自由に作りきれない、悪ふざけができないという側面もあったのですが、後半は事故的にシリーズ構成を放棄するということで「各話の連続性が薄く、ネタのベクトルも回ごとに違って当たりハズレが大きい」という一般的なギャグアニメらしい「雑さ」とか「多様性」のような要素が強まったのではないかと思います。
これは結果としてある意味、目指していた『おそ松さん』の構造に近づいたことになります。
さて、ここからが「総括」になりますが、書いてきた通りうまくいったこともあればうまくいかなかったこともある、想定内のこともあれば想定外だったこともあり、その想定外のものも良い方に転がった面もあれば良くない方に転がってフォローしきれなかった面もありました。
ですがそんな中、「このVtuber全盛の世において、『アドリブCGアニメ』としての在り方を提示する」という最も重要なミッションに対しては一定の成果を収められたのではないかと感じています(い、い、い、いかがでしょうか????)
ただし、今作に関しては「続編を作り続けていく作品」ということを強く念頭において作ってきました。
新規ユーザー&ライトユーザーに裾野を広げることもそう、アニメの内側に入る努力もそう、何をやっても成立する「選手権」もそう、普遍性を持たせた最終回もそう。
『gdgd妖精s』や『てさぐれ!』のときに得意としていた「短期決戦におけるゲリラ戦法」という武器はあえて封印して臨んできました。
そしてワンクールかけて積み上げて、広げて、やっと「何をやっても『ひもてはうす』らしく楽しめる状況」が形になりました。
これは新しい「遊び場」です。
あとはキャスト、スタッフ、そしてユーザーの皆さんで自由にふざけ倒すだけです!
そのすべてが『ひもてはうす』の魅力になっていくはずです。
いつもよりしっかり目に作りましたし破損検証の実験も強めにやったので、多少乱暴に遊んでも大丈夫です!
2017年末の「制作状況発表トークショー」から丸1年、応援してくださった皆様本当にありがとうございました。
ようやくパッケージ1巻の発売を迎えますし、2月と6月にはイベントもあります。
今後とも末長く『ひもてはうす』を愛していただけましたら幸いです。
【追伸】
各巻パッケージ特典のオーディオCDに収録される未公開パジャマパーティーですが、さすが歴戦の猛者たちだけあってどれもとても面白いです!
中でもぜひ聞いていただきたいのは、危機回避選手権でときよ(本物)&みなもが演じた「修理に出したiPhoneが返ってきたらかまぼこ板になっていた時」です!おたのしみに!
January 18, 2019 | 固定リンク
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