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『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』拝読。
ベストセラーになっている『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』を読みました。
乱暴にひとことで要約すると、もはや「共感」しか人を惹きつける手段が無い時代、経営者も「美意識」を養わないとユーザーや従業員がついて来ないよね、…かな?
ものすごく刺激的な本でした。
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これまで経験則的な実績を元に経営判断をしてきた多くの企業が、近年は外部のコンサルタントを受けて客観的なデータを元に合理性と効率を重視して経営判断を行うようになった。
しかし今やどこの会社も合理性と効率を重視していて、その結果商品の差別化が希薄になり、サービスのスピードと価格競争に陥ってどんどん企業のブラック化が進んでいる。
また会社自体の差別化も希薄になり従業員たちにもそこで働く魅力を与えられなくなった。
そんな中、経済のグローバル化が進んだりスマホでの常時ネット接続が当たり前になったり、市場の変化が早くそして複雑になった。
それによりもはや論理的なアプローチではユーザーを満足させることが難しく、経営判断が追いつかない時代になった。
そこで経営者に必要になったのが「直感的」「感覚的」に最適な判断を導き出すスキルだ。
ただし「直感的」「感覚的」とは言っても非論理的ではいけない。
ただの個人の好みではなく、”超”論理的に「美しい」「正しい」「善い」を判断できなくてはいけない。
今後はその会社が何を「美しい」「正しい」「善い」と考えるかがユーザーにとってその会社の商品を買う動機であり、従業員がその会社で働く理由である。
そこで今、世界中のエリートたちはその能力を養うためにクラシック音楽・絵画・文学・詩などを真剣に学ぶことで、普遍的な「美」の判断基準となる「教養」を培っている。
ビジネスの最先端では改めて「教養」の価値が見直されている。
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これはあらゆる会社が消費者や労働者と【アーティストとファン】の関係になるってことだ。
合理性や効率には正解がひとつしかないけれど、「美しい」や「気持ちいい」にはいろんな形の正解がある。
それを直感的に打ち出して共感を得られる会社が生き残る、ということらしい。
まずこんなに先進的な内容なのに誰にでも分かるようなものすごく優しく丁寧な文章に驚いた。
そして数々の実例と数字を紹介しながらの多角的かつ包括的な説明にも驚いた。
こんなに最新の世の中が広く&深く見えていて、それに対して鋭い仮説を立てる知性があって、しかも全てに裏付けのデータを集める丁寧さを持っていて、それに対する高度な分析力があって、さらにそれを誰にでも分かるように説明するサービス精神まで持っている・・・そんな完璧な人間(池上彰さん以外にも)居るんだ!?!?
断片的には「もしかしてこうなんじゃないかなぁ?」と自分でも薄々感じていたことが多かったけれど、「なぜそうなのか?」をひとつひとつ説明されるたびに雷に打たれたような衝撃と発見の連続で、まるでジェットコースター的なストーリーの海外ドラマを観ているような気分でした。
January 21, 2019 | 固定リンク | ()