世の中には「軍オタ」という人種がいます。ミサイル、大砲、戦車といった兵器の類や、ノルマンディ上陸作戦、ワルシャワ完全包囲網といった戦争用語に、過剰な興味を抱く人々のことです。
よく、戦争がはじまると、ニュース番組などに、目をキラキラと輝かせながら嬉々としてミサイルの性能やら攻略のポイントやらを語る、他の出演者とは明らかに異質なオーラを放つ人が出演しているでしょう? あれが軍オタです。
彼ら軍オタの喜びのツボは、僕らには難しすぎ、時にはまるで理解できないことすらあるので、いつも注目しています。
先日、そんな軍オタの1人であり、かつイケメンの先輩に、とあるゲームのオンラインイベントを教えていただきました。
対象となったオンラインゲームは「Navy Field」。とりあえずこのゲーム自体が、軍オタがうっとりするような要素に満ち満ちているので、軽くご紹介いたします。
このゲーム、公式ページにアクセスすると、まず専用ウィンドウが開いて「大海戦の幕は上がった! 勝利に向かって邁進せよ!」の文字が飛び込んできます。「NAVYFIELDの特徴」というページも、「側面装甲」「後部砲塔」「対空兵装」「射撃統制装置」「魚雷発射管」「曲射」「榴弾」「フリゲート」「駆逐艦」「輕巡洋艦」「重巡洋艦」「八八式12.7センチ40口径高射砲」「偵察・護衛・迎撃任務」など、耳慣れない言葉ばかり。あげくの果てに、このページの最後は、以下のような文言で締めくくられています。
戦術と戦略のハーモニーで完成する艦隊戦のオペラ
NAVYFIELDの戦闘において勝利をつかむためには、戦術と戦略という2つの異なる視点を同時に持たなくてはいけません。
(中略)
あなたが戦術と戦略のハーモニーの中に一定のリズムを見いだした時、NAVYFIELDの真の姿が登場する事になります。
ハーモニーにリズムを見出し、オペラを編む……軍オタのロマンを上手く表現した、名文だと思いますが……
ところでこのゲームは韓国製なのですが、韓国の公式サイトには、以下のようなムービーが置かれていました。
このムービーでは、発射・撃沈・進行などなど、軍オタのリビドーを刺激するゲーム画面に合わせて、映画「パールハーバー」の旧日本軍大活躍の映像が使われています。
あの……いいんですかアレが活躍してて。ミサイル発射→爆破の快楽の前には歴史的わだかまりも雲散霧消ということでしょうか?
世界のどこでも、軍オタは世間一般とは異なる思考回路で動いているようですね……この件に限って言えば嬉しいことではありますが……
だいぶ脱線してしまいました。オンラインイベントに話を戻したいと思います。
イベントの名前は「デスレース2003」。今年の8月に行われたそうです。
ルールは簡単。参加者が戦艦で決められたコースを回るだけ。
しかしそこはNavy Field。「史上最凶最悪最高のオンラインイベント」のサブタイトルの通り、「競争相手への妨害砲撃はもちろん自由!」「主催者側千巻からの怒涛の砲撃が執拗に行われる!」といった条件が、当然のごとくついてきます。
このレース、結果としては、完走すら困難なものとなったようです。
選手陣は容赦なくお互いに撃ち合い始め、その様子は正に地獄絵図といった様相。その場でほぼ立ち直れないダメージを受けた艦、轟沈した艦も少なくなく、運良くスタート直後の血煙街道を突破しても、第1コーナーで運営側妨害艦の砲撃が待っている。実はランダムに撃っているはずの妨害艦の砲撃が、何故か全弾命中する者、岩に座礁する者、コースから外れて迷子になる者など死屍累々!
(中略)
既に周回遅れとなった艦によるなかばヤケクソ気味の砲撃によって、せっかくのリードがアダになる艦も続出。中にはゴールは不可能と察し、逆走してまで他の選手を轟沈し続ける悪役的な艦も登場。欲望と羨望、嫉妬など、様々な感情渦巻く人間模様が繰り広げられた。また、各艦隊と一定の距離を保ちながら前走者を正確な砲撃で狙い撃ち、行き足を鈍らせてゴール直前に逆転するという冷酷無比なスナイパー艦もいれば、トップチームが次々脱落した結果、漁夫の利を拾う者もいた。
特に第三、第四レースは生存者2隻という、あまりにも壮絶で、あまりにも悲惨な結果と相成った。
イベントに参加した軍オタの人たち、楽しかったでしょうねえ……。 阿鼻叫喚の模様を記録したダイジェストムービーも、正にバトルロワイヤルといった様相を呈しています。撃ちたいだけ大砲を撃って、思う様撃沈を目撃できて、さぞかし満足だったことでしょう。
「いやーすごいですね。軍オタにとっては最高だったんじゃないですか?」と、このイベントを教えてくれた先輩にメールを送ったところ、以下のような返事が返ってきました。
「軽快に大砲を撃て過ぎです。不自由さが足りません」
……軍オタのツボは難しすぎます……