人気のない街や駅は、少しでも皆に好かれようと、涙ぐましい努力をすることが多々あります。
なんてことを思い出したのは、営団地下鉄東西線の木場駅ででした。
東西線の大手町から船橋までというのは、殺人的に混雑する、非常に駅利用の激しい地帯なのですが、何故か木場駅でだけは、誰も降りず、誰も乗ってきません。
東京都現代美術館が夜11時ぐらいまで開き、かつ周りに真夜中まで営業するアート寄りのカフェやらラウンジなんぞがいくつかできれば状況も変わってくるのでしょうが、今のところその望みは薄そうです。
木場駅の職員は、利用者数を増やすために、自力でできることは何かないか、必死で考えたのだと思います。先日木場駅に入ったら、エスカレーターを降りきったところに、こんな壁画がありました。
これは……どう反応したらいいのでしょう?
その1.「素敵!」 …… 別にそんないい絵じゃありません。
その2.「歴史を感じさせるなあ」 …… 最近描かれたものです。
その3.「今っぽい!」 …… 全然、江戸の絵です。
と、言うわけで、結果としては、前述の通り「駅員さんが必死で考えた結果が、これか……」という感想しか出てこないわけです。
「KIBA」という、中途半端に若者に媚びたローマ字書きが、見れば見るほど僕を悲しい気持ちにさせます。今風な感じを出すための工夫としては、これが木場の限界だったのでしょうか? 大失敗です。木場の歴史でも書いたほうがどんなにか良かったでしょう。
それと、隅っこにさりげなく描かれたアクロバティックな人は、イヤな感じで気になります。なぜか、全く楽しんでるように見えないんですよね。「仕事だから」という淡々としたセリフが逆立ちの彼から聞こえてきそうで、見ているこちらも全く愉快な気持ちになりません。
結果としては、この壁画は、全く木場駅のイメージアップには貢献しておらず、むしろ逆に木場の寂しさやトホホ感を表現してしまっていると思います。
実はいいトコなんですけどね……このような試みが今後も続くようであれば、木場は決して吉祥寺や自由が丘のように、「住みたい街ランキング」に出ることはできないでしょう。
可哀想な木場。切ない木場。哀愁漂う木場。ぜひとも発想を転換して、頑張って欲しいものです。