僕が高校生の頃、クリスマスイブを家族と過ごすのは、屈辱的なことでした。
24日の夜、僕は「友だちとパーティやる」と言って、家を出ました。
それはウソでした。パーティの予定なんてありません。
どこかクラブにでも行こうかと思ったのですが、次の日も学校だし、朝まではいられません。一晩を愉快に過ごすようなお金もありませんでした。
しかたなく、ホットドリンクを買って、自転車で公園に行きました。
それはそれは寒い日で、屋外に長時間いるなんて、正気の沙汰とは思えないような気温でした。
芝生に寝っころがり、そこで適当な時間を過ごし、ころあいを見計らって帰るつもりでした。
東京の空は相変わらず曇っていて、星なんてほとんど見えないような、どんよりした夜空でした。
寝っころがってしばらくして、僕は急に発見したんです。
オリオン座を。
星座を発見したのは、これがはじめてでした。
僕はびっくりして、目を離したら二度と見つけることができないのではないかと、じっとオリオン座を凝視していました。
しばらくして飽きたので、ちょっと目を逸らし、また同じ方向に目を向けました。
オリオン座はすぐに見つけることができました。
どんなに目を離しても、上を見ると、すぐにオリオン座が目に飛び込んできました。
星座が判る人になった。それは、ちょっと格好いいことのように思えました。
僕は嬉しくて、何度も何度も、目をつぶってはまた開いて、オリオン座を見つけました。
何時間かして、寒さのあまり死にそうになったので、家に帰りました。
家には、手作りのショートケーキがありました。いつものことですが、とても美味しかったのを覚えています。
なんてことを、平井堅の新作「見上げてごらん夜の星を」を聞いて、思い出しました。
あの年以来、家族でクリスマスイブを過ごすことは、ほとんどなくなりました。
でも、家で、家族に囲まれて、美味しいご飯とケーキを食べ、プレゼントをもらうのは、実はとても暖かな、幸せな時間だったのだな、と今は思います。
あと、今でもオリオン座だけは、すぐに見つけることができます。
それ以外は北斗七星ぐらいしか判らないですが。
今年のクリスマスイブは、僕は仕事ですね。しかもいつ終わるかも判らないです……
みなさんは、今年、どんなクリスマスイブを過ごしますか?