昨日は人前でこの話が出たので笑っていたのですが、やはり不快なので、改めて表明しておこうと思います。
この記事は「まじめ小鳥」であり笑いの要素は皆無なので、興味のない方は次の記事をお待ちください(w
livedoor PICSの件です。
先日リニューアルされ、Flickrそっくりになっていました。
livedoorは以前も、livedoorフレパのデザインをmixiそっくりにしたりしていますね。
世間では「インスパイア系」と言って、笑っているようです。
でも僕は、こういうインスパイア系を見ると、いつも思うんですよね。
オリジナルのサイトデザインをした人の気持ちを。
オリジナルを作るときは、大変です。
ゼロから、色々なことを想定して、少しずつUIやデザインを設計していきます。
その労力たるや膨大なものです。
ビジネス的に言うと、そこにかかるコストは膨大です。
しかも、実際サービスが成功するかどうかは、
直接ユーザーに触れる、これらUIやデザインの部分にかかっている場合が多い、と僕は感じています。
一方、インスパイアされるのは簡単です。
世間で超流行っているサービス、例えばmixiやらFlickrやらを
「デザインが良いのも成功の要因」
と考えて、それをまんまパクッてくればいいのですから。
- サイト全体の構成はどうするか。
- ユーザーをどうナビゲーションしていくか。
- どこにどういったボタンを配置するか。
- 色はどうするか、見やすく格好よくするにはどうするか。
- デザインから派生して考えられうる機能をどう実装するか。
- 自社の他サービスと連動できる余地をどう作るか。
あとはそれをパクればいいだけなのです。
非常に簡単で、楽チンですね。
ビジネス的に言うと、そこにかかるコストを節約できます。
節約したコストを他のことにまわしたり、全体コストを下げたりできます。
パクッた人や会社は、パクッた時点で、オリジナルのことを馬鹿にしてるんだと思います。
「俺は、お前が良いものを作るために費やした労力と時間を、遠慮なく盗んでもいい」
と、そう言っているも同然。
いや、馬鹿にするよりも性質が悪いですね。
パクッた人や会社は、オリジナルに対して敬意を払わず、
オリジナルの良い部分をそのまま美味しくいただいてしまおうとしています。
それによってオリジナルがどう感じるかなど、一切考えていません。
自分のことだけしか考えていません。
自分さえよければいい。相手がどう思うか考慮しなくても構わない。
これは相手を徹底的に踏みにじる行為です。
インスパイアされるのはよいと思いますが、それとパクリとは明らかに違います。
インスパイアはコピーであり、パクリはコピペです。そこには相手に対する敬意も自分の努力もない。
そしてこういった行為は、僕にはたまらなく不快に感じます。
僕はクリエイターに敬意を払うタイプのディレクター/プロデューサーだからです。
確かに、著作権法上は、サイトデザインは著作権保護対象になりません。
でも、だからといって、成功して輝いているオリジナルをまんまパクッて涼しい顔して良いものでしょうか?
livedoor PICSを見たFlickrのデザイナーが、
あるいはlivedoorフレパを見たmixiのデザイナーが、
自分の時間と労力を盗まれたように感じたり、
パクられたことに憤りを感じたり、
あるいは「しょうがねーなーホリエモン」と言いながら寂しく諦めたり、
自分が軽く扱われたことを悲しんだり、
そういうことを想像しても、まだ、
「パクッてコスト削減した俺って超ビジネススキル高い」
とか言って、笑っていられるのでしょうか?
それって、仕事云々以前に、人としてどうなんですか?
そんなやり方で、果たして自尊心を保てるのでしょうか?
自分の仕事が好きになれるのでしょうか?
そんなことしてて、楽しいですか?
あるいは他の人たち。
そうやって、敬意を払うべき相手を踏みにじって笑っているような人に対して、
敬意を払えますか? 親しみを感じますか?
その人のことを大切にしてあげようと思えますか?
livedoorで働いている1人1人は僕の知る限りとてもいい感じなのに、
どうしてこういうものが生まれてきてしまうのでしょうか?
なんか業界的に、
「たかかパクりくらいでカッカするなんて、大人気ない」
とか、
「ホリエモンのやることにいちいち腹を立ててもしょうがない」
みたいな空気が流れていますが、
今後このような事例がどんどん増えていくと、
日本は非常にマズいのではないかと感じたので、
敢えてここに表明しておくことにしました。
そう、僕は、これは、日本のIT業界の危機でもあると思っています。
このような「インスパイア系」とうそぶくパクりものが成功してしまうと、
世間的にこの方法論が認められ、
デザインにコストかけるなんてバカバカしい、どっかからパクってこい、ということになり、
機能も何もかも、地道に研究して開発したり試行錯誤を重ねながら検討するのではなく、
「どこから何をパクろうか」
ということだけを考えるようになり、
そして、どんどんコピー品が低価格で市場に出てきて、
コモディティ化が発生し、ダンピングが発生し、
で結局、日本でITというと、
「M&Aと合併」
「お金持ち」
「ヒルズとか渋谷とかオシャレなとこ」
ということになってしまい、
そんなことでは何のイノベーションも育たず、
どんな新しいことも生まれず、
プログラマーやデザイナーといったクリエイターは育たず、
あるいは優秀なクリエイターは海外に逃亡し、
日本はITで世界から取り残される、
でも日本語という特殊言語で守られている関係上、
基本的には海外で成功したものをインスパイアしてしまえばいいから、
ゾンビのように生きながらえることだけはできる、
日本のIT業界は、そういう、つまらないところに堕してしまう危険性があると思っています。
インスパイアは結構ですが、やりすぎてしまった方は、
もう一度、胸に手を当てて、自分が何をしでかしたのか、これから自分は何ができるのかを、
考えてほしいと思います。考えてくれたらいいなあ。
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※本記事は元々「livedoorがmixiに引き続きFlickrをレイプした件について」というタイトルでしたが、レイプという言葉は強すぎるとの指摘をいただいたので、「livedoorはFlickrにインスパイアされすぎた」というタイトルに変更しました。