荒川選手、すごかったですね。完璧でござった。
オリンピックという一点に向けて、技術も体も気持ちも全て調子を合わせてくるというその目標設定力と達成力、そこからでるあの凛とした自信に満ちたオーラは、あまりにも見事だと思いました。
でも……僕個人の感想としては、本当はイリーナ・スルツカヤ選手に、金メダルをあげたかったです。
一生続くであろう難病と戦いながら滑り続ける女王に敬意を表して。
知ってる方も多いと思うのでダラダラとは書きませんが、スルツカヤ選手は自己免疫疾患(免疫が自分自身を攻撃する難病)にかかっています。これは一生続く病気で、スケートを滑るためには大量の薬を常に飲み、副作用と戦い続ける必要があります。
スルツカヤ「スペードの女王」を演じる・その2より:翌シーズンは気管支炎を患いながらも持ち前の気力でカバーし、競技会にも出場し続けていましたが、03年のニューヨーク世界選手権はお母様の急病で出場辞退いう不運に見舞われます。さらに無理がたたったのか、追い討ちをかけるようにとうとう自分自身が病に倒れ、しばらくは病名も治療法もわからず病院を転々とする日々だったといいます。昨シーズンのグランプリシリーズの頃は手足がむくんでスケート靴が履けないどころか、トイレさえも這って行かなければならなかったと話していました。
薬漬けの女王、最後の五輪=悲壮感漂うスルツカヤ-ロシアより:
「今も多くの薬を飲んでおり、痛みもある。長生きできないかもしれない」-。トリノ冬季五輪でメダルを狙うフィギュアスケート女子シングルの日本勢に立ちはだかるロシアの女王、イリーナ・スルツカヤ(26)は、大量の薬を持ってトリノに臨む。スルツカヤの闘病を知るロシア国民は、女王がソ連時代を含めてロシアにフィギュア女子初の金をもたらすことを待ち望んでいる。
<6>難病と戦う女王 スルツカヤより:
ところが03年2月のグランプリファイナル。観戦に来ていた母親が腎臓病で倒れ入院。世界選手権の出場を辞退し、看病に専念しようとしたところ、今度は自分が体調不良で倒れてしまったのです。
原因の分からない体のむくみ、ぜん息--。病院を転々とするうち、心臓の血管が炎症をおこす難病と診断されました。大量の薬漬けからおきる副作用で、歩くことすらできない時も。スケートが心臓に負担を与えるため、リンクにいる限り薬を止められないと分かった時は、スルツカヤは決断しました。「私はリンクを降りて、スケートが好きだと分かった」。命と引き替えに、スケートを選んだのです。
(2)病気の母、家族の生活支え「金」挑むより:
治療は今も続いている。炎症がひどくなると、薬を増やす。副作用のめまいなどを抱えながら、歯を食いしばってジャンプを跳ぶ。並大抵の気力ではない。
自分と、母の医療費。夫との生活、両親の生活費。スルツカヤの肩には、多くがかかる。五輪の金メダルは、プロに転向した時の「肩書」にもなる。競技への情熱と女王のプライドだけでなく、自分と自分をはぐくんでくれた人々のために、金メダルを取りたい理由がある。
彼女の口癖は「これが人生(that's just life. / it's life.)」。順風満帆とはとても言えない年月の中で、スケートへの愛を支えにして、痛みと戦いながら誰よりも練習し、激しく情熱的に生きています。病に倒れた後のスルツカヤは、なんと8度も世界的な大会で優勝しているのです。
そんな彼女に心を打たれている人もたくさんいます。ロシアでは国民的英雄、ヨーロッパでも圧倒的な人気を誇り、日本にも多数のファンがいます。
今回の銅メダルでのインタビューでは、「普段の私には何でもないジャンプ。でもそれがスケート、それが人生。すべてを思い通りにはできないわ。メダルを取れて幸せよ」と言っていたそうですが、その後1人で控え室に戻り、銅メダルを叩きつけて、延々と泣いていたそうです。エキシビジョン用の練習でも終始気落ちした様子だとのこと。
彼女の人生の中で「スケート」の部分だけは完璧なものにしてあげたかったなと思いますが……でも、メダルは結果に過ぎません。確か今回銀メダルのコーエンのセリフだったと思いますが「メダルを取るもOKだし、取らないのもOK。でも何よりも大事なのは、その結果に向かって全力を尽くすそのプロセス。それこそがスポーツの素晴らしいところ」と言っていたそうです。
その通り。そこに、スポーツの観客たちは感動するのだと思います。
その意味では、スルツカヤは今でも堂々たる女王です。カズが今でも堂々たるキングであるように。
そうそう、彼女の愛犬は、秋田犬らしいですよ。
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タカラ