先週1週間、僕は1人で、
長野県の飯田にある信州内観研修所に、「内観道場」を体験しに行きました。
内観とは? 僕の言葉で要約すると、内観とは、
記憶のデフラグ
です。
以下、簡単にレポートをしたいと思います。
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「内観」は、日本で開発された精神修養法です。
仏教の「み調べ」という修行をベースに、
一般人でも行えるように改良し、宗教色を取り除き、
現在では「内観」としか呼びようのない独特なジャンルに成長しています。
ヨーロッパを中心に世界的にも普及しつつあり、
一般の人々はもちろん、少年院や刑務所、
心理カウンセリング、薬物中毒に対しても使われ、
国際内観学会も盛況だそうです。
僕が内観に興味を持ったのは、友人の体験談からでした。
それ以前にも、整体師、寺門琢己先生の「プチ内観こころ塾」という本で、
名前だけは知っていましたが、特に強く心には残っていませんでした。
しかし、友人は、こんな話をしてくれたのです。
アルコール中毒の母に育てられ、
それを恥じて憎んでいる人が、内観をやったんだよ。そしたら……
「僕の母は、アルコール中毒だった」
ということに気づいたんだって。もちろん母がアルコール中毒だってことは前から知っていたけど、
そのことを、別の観点から理解したって。
つまり……母は、アルコール中毒だった。そういう病気だった。
なのに、一生懸命、僕と妹を育ててくれた。
アルコール中毒と戦いながら、ご飯を作り、洗濯をし、掃除をし、可愛がってくれた。でも、満足に家事ができないときも、もちろんあった。
そして僕はそんな母を見て、軽蔑していた。
何やら異常に説得力のある話でした。
どうやら内観というのは、過去の経験をもう一度自分に生かす方法らしい。
また、誰かの意見を鵜呑みにするんじゃなくて、
自分で自分のことが判っていくらしい。
みなさまご存知の通り、僕は今、12年間働いた会社を辞めて次を模索中で、
日々、自分探しをやっています。
自分の今までを知ることは、自分のこれからを考えるのに役に立つのではないか、
そう思ったので、内観を受けてみることにしました。
行ったのは「信州内観研修所」。
中野節子さんという、心理カウンセラーを25年間続けた末に、
「内観の方がいいじゃん」と、
現在は内観の普及に専念している方が運営しています。
とても優しい人です。
まず、内観に入る前に、絵を描きました。
「木と、家と、人が入っている」というのが条件。こんなのを描きました。
特に中野さんからのコメントはなし。単に絵を描いただけ。
そして簡単な説明を受けて、さあ内観の開始です。
で、どうやってやるのでしょう?
内観は、自分の過去を思い出していく作業です。
非常にシンプルですが、独特の方法で行います。
バリエーションは多少ありますが、基本的には、ある1人の人を対象に、年代を1~5年単位くらいに区切って、
- してもらったこと
- してあげたこと
- 迷惑をかけたこと
「母に対して、中学生の頃の、してもらったこと、してあげたこと、迷惑をかけたことを調べる」
といった具合です。
注意点があります。
内観では、「具体的な事実を1つ1つ思い出して」いかなくてはいけません。
快/不快ではなく、事実を淡々と見ていくのが、内観です。
人間は大抵、感情や主観を中心に記憶を構成しています。
また、人は大抵、
「してもらえなかったこと」「十分じゃなかったこと」
を覚えています。
そこで、視点を逆転させてみて、
「してもらったこと」
について、単純に事実のみを拾い集めてみる、という作業を行うのです。
これが内観のコアであり、内観の発明です。
だから、
「お母さんに優しくしてもらったなあ」
はNG。あくまでも事実を追い求めます。
もちろん、幼い頃のことは、思い出せません。
でもじっと考えていると、少しずつ浮かんでくる記憶もありますし、
どうしても思い出せなければ、理詰めでもいいです。
例えば3歳~5歳の間では、母に、おおよそ、
3度×365日×3年=3285食
回の食事を用意してもらっていたはずです。
まずは母がいれば母から。終わったら、次は父、祖母、弟、相方……と続きます。
これを、1週間かけて、1人で行います。
この間は、本を読んだり、パソコンや携帯電話をいじったりすることができません。
1人で、楽な格好で座ったり寝転がったりしながら、じっと内観していきます。
ときどき中野さんと話をしますが、それも2、3分の、僕からの報告がメインです。
そういう非日常空間を作るのが、内観道場です。
1日目、2日目の途中くらいまでは、ソワソワして落ち着かないのですが、
3日目にもなると、結構集中できるようになってきます。
そうすると、色々なことを思い出してきてきます。
そして、新たな発見が多数出てきます。
例えば、僕の場合は、
小さい頃は、母にご飯も作ってもらい、洗濯も掃除もしてもらい、とか、
退屈だとどっか連れてってもらい、なんか買ってもらい……だったなあ。
今だったら、毎日のこれが相当大変だと判るし、時には、
「いつも世話してもらってるから、今日はいいよ。どっか遊んできなよ。
家事はやっとくからさ」
とか言いたくなるかもしれないけど、当時はしてもらいっぱなしだったなあ。
反抗期のころは親とほとんど話をしなかったけど、とか、
その少し前はよく口論していたなあ。
あれは要は、親が何か子どもの助けになりたいと思って色々やってて、
でも何を言っても効果が出ないで、じゃあ子どもが自分で気づくまで、
ひたすら食事や洗濯などの裏方に徹しながら待つしかないと、
ずっと耐えていてくれていたのかもしれないなあ。
昔は父がよく「もっと素直になれ」と言っていて、とか、そういうことを思いました。
まるで意味が判らなかったし今でも十分に素直だと思ってたけど、
こうやって色々洗い出してみると、なるほど自分の自尊心の強さや
見栄っ張りな部分が、素直に色々受け入れるのを拒んできていて、
これは相当に損をしてきているなあ。
そして、6日目かな、事実の数が一定数以上に溜まったとき、
僕が抱えていた色々な問題が、予想してなかった方向から、
いきなり解決しだしたんです。
詳細は個人的な内容になるので書けないですが……
自分がどんな状態になっても決して崩れない「土台」を発見したのです。
生まれた頃からずっと、無条件に注がれてきた愛情。
最悪な状況下でも、許され、受け入れ、支えられてきたこと。
そうしてくれた人たちがいたこと。
そういうことが、概念としてではなく、
圧倒的な量の事実というデータを背景にして、
実感として感じたのです。
この土台からスタートする、という発想でいいじゃない。
それは、色々なことの気が楽になる、
そういう類の発見でした。
7日間の内観道場が終わり、再び、絵を描きました。
「木と、家と、人を入れた」絵。こんな風に変わっていました。
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レポートは以上です。
内観は「記憶のデフラグ」です。
「脳の大掃除」と言ってもいいかもしれません。
忘れていた事実をきちんと整理整頓していくことで、
嬉しいとか悲しいとか楽しいとかキツいとかいう以前に、
何かとても大切なことに気づく、そんな体験だと思います。
もし受けてみたいと思った方は……
内観は純粋にメソッドで、団体や家元はないのですが、
「内観研修所」と呼ばれるところが各地にあるので、
最寄のところに行けばいいと思います。
ちなみに、信州内観研修所のスケジュールは、以下の通りだそうです。
- 問い合わせ先:naikan_s(アット)yahoo.co.jp
- 予定:8月1日~7日 at 下田(温泉付き) 、 8月19日~25日 at 長野飯田 、 26日~9月1日 at 長野飯田 、 9月23日~29日 at 長野飯田
問い合わせてみてもいいかもしれません。
受けるときは、ぜひ7日間の「集中内観」を受けてください。
巨人の小久保も言ってますが、1日とか3日とかでは、慣れてきたころに終わってしまいます。
一度でも集中内観を受けておけば、やり方のノウハウは判るので、
今後数十年に渡って使えます。。
また、お子さんのいる方は、
子どもが小学生や中学生のときに受けさせておくと、
その後の人間関係で悩まなくなり、
その子の人生が非常に楽になると思います。
寺門琢己先生も、小学生の頃に受けたようです。
以上です。長文をお読みくださって、超ありがとうございました。
さて……そろそろ長い夏休みも、終わりの時を迎えつつあるのかな……
一週間で自己変革、「内観法」の驚異
石井 光
プチ内観こころ塾
寺門 琢己