んー……
こういう話や、こういう本(1、2、3)みたいに、
「どうすれば内定を取れるか」系の話はよく見ますが……
個人的には、
小手先のテクニックを修正して内定を取るくらいだったら、
内定取らないほうがむしろ良いんじゃないか、と思います。
ちょっと、僕の従姉の「ミキ姉ちゃん」の話をします。
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ミキ姉ちゃんは某女子大卒。
就職氷河期がくる少し前に、就職活動期を迎えました。
周囲はバタバタと就職先が決まっていきます。
しかし、自分はどうしても内定を取ることができません。
結局、そのまま大学を卒業してしまいました。
つまり就職浪人。
ミキ姉ちゃんは、落ち込みました。
社会に出る1年目に、いきなりつまづいた。
「社会で揉まれて強く」なろうにも、
まずその社会に入っていけないんじゃ、
どうしようもないじゃないか。
どうしたらいいんだろう?
とりあえずアルバイトを探し、
小さな法律事務所の事務のような仕事を見つけました。
働きながら、ミキ姉ちゃんは考えました。
社会は、私を「育ててやろう」と思ってくれなかった。
だから、私は自分で自分を育てていくしかない。
ミキ姉ちゃんが選んだのは、英語でした。
元々、小さいころ海外に住んでいたこともあって、
英語は他の人より多少はできます。
この「英語力」を徹底的に鍛えよう、と、
仕事をしながら、ひたすら勉強しました。
英語力が上がっていくにつれて、
少しずつ、色々なところで働けるようになっていきました。
職を転々と変えていくうちに、
自分は、秘書の仕事であれば、
他の仕事より多少は得意だと感じるようになっていきました。
そして、秘書検定を取る勉強もはじめました。
何年もそうやっているうちに、
だんだんと、秘書としての格も上がり、
外資系企業の、外国人の役員の秘書なども
勤めるようになっていきました。
そこで、人生の大どんでん返しが起こります。
たぶんたまたまだと思うのですが、
ミキ姉ちゃんが勉強していたのは、
クイーンズイングリッシュでした。
クイーンズイングリッシュは、
アメリカ英語や労働者階級の英語ではなくて、
上流階級の英語で、社交界などでも使われます。
企業秘書で、なおかつクイーンズイングリッシュを
ほぼ完璧に話すことができる人、というのは、
世界中を探しても滅多にいないそうです。
ミキ姉ちゃんは、「社交界に連れて行ける秘書」として、
外国人の役員に、ものすごく重宝されるようになっていきます。
最終的には、誰でも知っているような
某外資系企業の社長秘書にまでなりました。
年俸もケタ違いに高かったそうです。
また、ミキ姉ちゃんが病気で3年間ほど職場から離れたときも、
その外資系の超大企業は、ミキ姉ちゃんをクビにせず、
3年間ずっと休職扱いしてくれました。
あの「冷たい」と言われる外資系がですよ?
さて、ここで時計を巻き戻して考えてみるに……
もしミキ姉ちゃんが、どこか適当な会社に就職できていたら、
どうなっていたでしょうか?
「熊野で起きたプチ奇跡のメモ」でも書きましたが、
いったい何が幸いするか判らないし、
神は自ら助くるものを助くし、
その助け方は、こちらが想定していたものとは、
たいてい異なるのかもしれませんね。
だから、就職活動に失敗した人は、
そこでモチベーションが下がったり、
なげやりになったりするのではなく、
何か色々と、もがいて、頑張って欲しいなと思います。
僕の就職活動ですか? まあ、こんな感じでした……
13歳のハローワーク
村上 龍 (著)