上の写真で笛を吹いているのは、
恐らく、僕が一生を通じて、
もっとも深く影響を受けるアーティストの1人になるであろう、
「雲龍」さんです。
今まで全く聴いたことがないような、
幽玄で、心に染み入る、
もう1年近く聴いていますが全然飽きない、
そんな、特別な音を奏でます。
もし今年のクリスマス・プレゼントにお悩みでしたら、
彼のCDブック「遮那」を強烈にオススメします。
以下、詳しく紹介させてください。
●●● 概要 ●●●
雲龍さんは、笛の奏者です。
扱う笛は多種多様。能管(能で使う笛)を中心として、古代の和笛、石笛、インディアンフルートなどなど、古今東西の非金属系の笛を演奏します。
細野晴臣さんやSKETCH SHOW、立川志の輔さんらに呼ばれ、いろいろと共演しています。
「遮那」というCDブックを1枚出しています。
また、出雲大社や伊勢神宮、熊野神社などの日本中の神社、ワタリウムや横浜、六本木ヒルズの美術館、その他、病院や各地の地元の聖地など、あちこちで奉納の笛を吹いています。
2007年春公開の映画「地球交響曲 第六番」の出演者の1人です。
詳しくは、雲龍公式ホームページをご覧ください。
●●● 雲龍さんの笛の音について ●●●
彼の音楽は……いや、音楽というより、彼は音の響きそのものを鳴らす奏者です。
敢えて言うと、雅楽や能楽の原型。
日本が「やまと」と呼ばれていた古い時代に、空気の中に満ちていた、または山谷でひっそりと吹かれていた、そんな音です。
彼は演奏の前に、必ず「今から出す笛の音は『どんな世界』か」という話をします。
そして、自分を触媒として、周囲の空気を、そしてさらにその外の空気を感じ、その形を、笛の音にあらわします。
だから雲龍さんが演奏しているときは、まるで雲龍さんは、消えたようになります。
聴いている人も、たいてい目を閉じて、
雲龍さんが消え、
自分を取りまく場も消え、
時も消え、自分も消えて、
古代の空気が漂う場所にいるような、
あるいは自分の内面をゆったりと泳ぐような、
そんな不思議な時間が流れ、
そして気がつくと1曲終わっている。
雲龍さんの演奏を聴くというのは、そういう体験をする、ということです。
CDブック「遮那」では、谷川俊太郎さん、細野晴臣さん、立川志の輔さんが、それぞれ以下のように言っています。
谷川俊太郎:雲龍さんの笛を聴いていると、
なにものかが訪れてくるように感じる。
細野晴臣:雲龍。おそらく日本で唯一無二の笛吹きだ。そもそも楽器は旋律を奏でるもの、と人は思い込むが、実は音を発することが本分である。<中略>形のない響きを音霊という、その音霊を発する笛吹きが雲龍であり、他にそのような存在をぼくは知らない。
立川志の輔:「遮那」はたっぷり時間のとれる時に、
お聞きください。
運転中、食事中、仕事中、
勉強中などは危険です。
●●● 雲龍さんのバイオグラフィー ●●●
僕が雲龍さんと出会ったのは、今から2年弱ほど前、とある花見の会に彼が呼ばれ、笛を吹いたときでした。
以下は、その時に聞いた、彼の今に至る経歴です。
雲龍さんは、とある超一流の、能の鼓の家元の生まれです。
笛、じゃなくて、鼓、です。
幼い頃、彼の家の裏には、白浜がありました。
彼はそこに毎日のように出かけ、周囲から聴こえてくる波や風や葉や鳥の音を自分の元に引き寄せて、自分の中にいつも流れている音とミックスして遊んでいたそうです。
なんじゃそりゃ!?
「みんな、そういうことやらないんですかね……」
と、彼は戸惑っていました。
少なくとも僕はしたことありませんが……
ところが彼が生まれたのは、能の家元の家。
5歳までは普通の子どもとして育てられましたが、6歳から急に「鼓の家を継ぐ子」としての修行がはじまったそうです。
それは、何度聞いても、よく理解できない、一種独特な世界でした。
鼓の家の子は鼓が最初から上手に叩けて当然。そんなプレッシャーの中、朝も昼も夜もなく、ひたすら鼓の稽古の日々。
学校より鼓の方が大事。幼い頃からあの厳粛な能の舞台にあがるために、授業も休みがち。私生活など学校と家の間の通学路くらいしかない日々。下校拒否症になりかかったりもしたそうです。
そんな生活を繰り返し、30歳前後になったときのこと。身体を壊したりなんかしたりして、
「自分は本当は、笛を吹きたかったのだ」
と改めて強く感じた雲龍さんは、とうとう能楽協会を脱会することを決意します。
ところで当時、能楽協会を脱会した人など、1人もいませんでした。当然、脱会方法も決まっていません。
そんな前例ナシの状況下で、雲龍さんは色々と手を尽くし、数年かけて、とうとう脱会者第1号となります。
しかし、その時雲龍さんは、能楽協会からいくつかの条件を課されました。
1つ、能笛を吹いてはいけない。
1つ、能楽堂に上がってはいけない。
彼が一番好きな笛は能笛だったのですが、その演奏は禁じられたのです。
最初は「困ったなあ」と思っていた雲龍さんでしたが、しかしそれから、彼の元には、色々と不思議な縁が重なって、さまざまな笛が届くようになりました。
古神道の神主から、石笛を。
ナホバ族から、インディアンフルートを。
正倉院に収められた笛のレプリカを。
元は香水要れだったコアガラスを。
そんな風にいろいろな笛と出会っていき、それを吹いているうちに、出会いが出会いを呼び、1つの出来事が次の出来事へとつながり、彼の演奏が徐々に話題となり、今は能笛を吹くことも能楽堂に上がることも許され、現在に至る、そうです。
●●● 彼の笛を聴くには ●●●
妙に長くなってしまいました。すいません。
ここまで読んでくれている人がどれだけいるか判りませんが……
雲龍さんの笛を聴くには、2つ方法があります。
1つは、彼が今年出した「遮那」というCDブックです。
遮那―水のながれ光の如く
雲龍 (著)
これは、雲龍さんの笛の音に惚れこんだ細野晴臣さんが、彼の世界をCDで再現するべく、ムチャクチャに微細なミックス処理を行って、ようやくできたCDです。
細野さんは、このCDブックの中で、以下のように言っています。
雲龍のイメージには既に場の共鳴が出来上がっており、それをぼくに伝えるために絵や言葉や図を駆使し、なんとかその世界の響きを感じることによって音響に置き換えることが可能となった。その世界は曖昧に見えて実は厳密な要素を持ち、まるで大自然そのもののシミュレーションと思えた。このCDブック、すごいオススメです。
僕は、もう1年近くずっと聴きこんでいますが、全く飽きません。
また、お世話になった人に、このCDをプレゼントしまくっています。「ぜひ他の人にも聴いて欲しい」と強烈に思わせる、不思議な魅力を備えたCDです。
僕みたいな人が多いのか、世界中にも広がりつつあり、それをきっかけにして、世界中の聖地から演奏会の依頼が舞い込みはじめているそうです。
もうひとつは、演奏会に行く方法です。
CDは素晴らしい出来ですが、やはりライブの方がいい感じです。
雲龍さんのホームページに演奏スケジュールが載っているので、近場に来ていたら、行ってみるといいと思います。
きっとスペシャルな体験になること請け合いです。先日も僕の両親をライブに連れて行ったのですが、普段ほとんど音楽に関心を示さない父母が、とても気に入っていたようでした。
ぜひ、「雲龍」の世界を体験してみてください。
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