何がベストのタイミングなのかはケース・バイ・ケースなのだなと、痛感しました。
先日、某レストランでクリスマス・イブのディナーをカッ食らっていたときのこと。
途中の経過はよくわからないのですが……ふと気がつくと、近くのテーブルから、やけに陽気な女子の声が聞こえてきたのです。
なにやらしきりに、
女子:「あたしもーダメだー」
と言いながらウヒャヒャと笑い、メインディッシュの肉に向かって、
女子:「お肉さーんごめんねー」
と謝罪しています。
何だろう?と思って振り返ってみると、そこには、若いカップルがいました。
男子は普通に座っています。
そして女子の方は……ただの酔っ払いと化していました。
顔を真っ赤にして、頭は楕円軌道を描いています。
今すぐにでも潰れてしまいそうです。
ここはまあまあちゃんとしたレストランだったはずが、いやにフリーダムなことになってしまっていました。
それにしても不思議なのは男子。面白いおっさんになってしまっている自分の彼女を見もせず、うつむいて何やらモゾモゾやっています。
あ、男子が何か取り出した。
え? え?
あれ……指輪じゃない?
お、女子の左手をとって……
薬指にはめた!
何やら言ってる!
プロポーズだ!
クリスマス・イブにプロポーズだよ!!!
でも女子、全然気づいてない!
女子:「あたしこんなに酒弱いはずないのにー」
とかなんとか言ってヘラヘラしてる!
指輪はめてもらった手をひらひらして顔を仰いでる!
周囲でウェイターたちがものすごく気にしている!
「ここはオレたちがなんとかしなきゃ」という使命感に燃えている!
お! ウェイター、とうとう2人がかりでカップルに近づいた!
拍手だ!
ウェイター、強制的にカップルを囲んで「ご婚約、おめでとうございますー」って拍手をしはじめた!
女子、まだ状況を把握してない!
「メリークリスマス!」とか言ってる!
超カオス!
いったいなんぞこれ!?
ウェイターがわざわざ大きい声で「ご婚約ですか?」って言ってるのに、女子は両手を合わせて、
女子:「お肉残しちゃってごめんなさーいー」
いやそんなことどうでもいいから!
でもすごい笑顔! なんだか幸せそうだから誰も強く突っ込めない!
そして男子。
ただただ真っ直ぐに座り、まさに動かざること山のごとしです。
大物なのか、それとも完全に諦めてるのか……
結局その後しばらくして、女子は酒の魔力で前後不覚に陥りながらも、ようやく自分の人生に何が起きたのかわかったみたいで、客も店員も含め、店中の人が安堵のため息を漏らしました。
クリスマス・イブにプロポーズなんて、状況としては最高のタイミングなはずだったのですが……いろいろと予想外な思い出が残ることになって、おめでとうございます。
プロポーズ大作戦
出演: 長澤まさみ, 山下智久