私家版・ユダヤ文化論 (文春新書) | |
内田 樹 おすすめ平均 ユダヤ人より内田樹のことが気になってくる本。 鋭い分析でした 中身は「反ユダヤ文化」論 とても内容の濃い本 神との対峙 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
内田樹さんの本が好きでよく読んでいますが、本書は小林秀雄賞を受賞した本で、速読には向きませんが、非常に読み応えのある素敵な本でした。
簡単に言うと「ユダヤ人はなぜ迫害されるのか?」についての論考です。
さらっとユダヤ人と書きましたが、そもそもユダヤ人とは誰のことか?という問いからこの論考は始まります。
日本人には直接関係ないような内容ですが、実はその昔、日猶(にちゆ)同祖論なるトンデモない妄想が、この国で堂々と論議されていたそうです。
ユダヤ人の陰謀史観についても、その出自の理由が語られています。
ユダヤ人が金融、流通、ショービジネスといった業界で活躍したのは、十九世紀にヨーロッパからアメリカに移住してきたユダヤ人に既存の業界の扉が閉ざされており、金融や映画界のようなニッチビジネスしかやることが無かったから。
非常に「まとも」な分析です。
終章「終わらない反ユダヤ主義」では、フロイトやレヴィナスを援用して深い人間心理を描きつつ、ユダヤ人の特異性を抉り出します。
この本を読んだ後、世界がそれまでのあり方とは別の様相を呈しているように思えました。大袈裟じゃなく!
それは、本を読む一番の醍醐味だと思います。
久しぶりに幸せな読書体験でした。
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